前運動皮質の基本構造と機能
解剖学的特徴
前運動皮質は背側(PMd)と腹側(PMv)に分かれる
一次運動野(M1)の前方に位置し、運動階層において重要な役割を果たす
頭頂皮質から感覚情報を受け取り、処理してM1に出力する
運動制御における役割
背側前運動皮質(PMd)の機能
・目標指向的なリーチ動作の計画と制御
・視覚・体性感覚情報を運動指令に統合
・動作選択と準備段階で活性化
・感覚刺激と運動反応の連合学習に重要
腹側前運動皮質(PMv)の機能
・把握動作のための「把握ネットワーク」の中核
・手の事前形成(物体に合わせた手の形成)を制御
・物体の特性に基づく力の予測的調整
・ミラーニューロンシステムの一部として観察学習に関与

運動学習における役割
学習の段階
早期段階:認知的処理が多く、PMdが活発に活動
後期段階:自動化が進み、異なる神経ネットワークが関与
学習形態別の特徴
PMd:連合学習、動作選択、認知的要求の高い学習に重要
PMv:観察学習、模倣学習に特に重要な役割
脳損傷後の機能回復
回復パターン
論文では2つの主要な再組織化パターンを提案:
1. 小さな損傷の場合
病変同側のPMCが主に再組織化
残存するM1への入力増加
脊髄への直接投射の強化

2. 大きな損傷の場合
病変対側のPMCが主に代償
交叉性経路を通じた機能代替
より重篤な症状を示す患者で観察

臨床的意義
この論文は、脳卒中リハビリテーションを「なんとなく動かす」から「科学的根拠に基づいて脳を再組織化する」へとパラダイムシフトさせる重要な知見を提供しています
個々の患者の損傷パターンに応じた個別化治療により、より効果的で効率的なリハビリテーションが可能になることが期待されます
参考文献
Kantak et al. Rewiring the Brain: Potential Role of the Premotor Cortex in Motor Control, Learning, and Recovery of Function Following Brain Injury. 2012
NEUROスタジオ東京