背景と目的
神経筋電気刺激(NMES)は、筋力強化や静脈血栓塞栓症(VTE)の予防、リハビリテーションなどに活用されており、その効果と快適性を左右する要素の一つに「モーターポイント(MP)」への正確な電極配置がある
MPは筋肉が最も効率的に反応する皮膚上の位置を示すが、個人差が大きく、臨床現場での探索は時間と手間がかかる
そのため、より迅速かつ効果的にMPを特定するための「ヒートマップ(出現確率マップ)」作成を目的とした
方法
健康な成人30名(平均年齢37歳)を対象に、ふくらはぎ(腓腹筋)の内側および外側頭部に対し、NMESを用いてそれぞれ最も筋収縮を誘発しやすい4つのMPを特定
各MPの位置は解剖学的基準点に基づき計測され、ふくらはぎ全体を6×8=48の3×3cmグリッドに分割して、それぞれの区画でMPが見つかる確率を算出した

結果
MPは主に、ふくらはぎの上部中央(膝裏の下3cm付近)および最大周囲径付近の外側中央に集中していた
特にエリア4(上部中央内側)およびエリア29(中央下部外側)では50%の確率でMPが発見され、エリア9、10、16もそれぞれ47%と高い出現率を示した
一方、外側・内側および下部のエリアでは出現確率は極めて低く、一部エリアではMPが全く見られなかった

考察
本研究により、ふくらはぎのMPには顕著な個人差がある一方で、共通の集中領域も存在することが確認された。特に、エリア4と29は臨床現場でのスキャン開始ポイントとして推奨できる
また、NMES装置を用いた治療時にヒートマップを活用することで、迅速で効果的かつ患者の快適性を高める電極配置が可能となる
さらに、ふくらはぎの中間より下部にはMPがほとんど存在しない
参考文献
Elias Schriwer et al. Motor point heatmap of the calf. 2023
NEUROスタジオ東京