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足部内在筋の強化が足関節捻挫のリハビリテーション結果に及ぼす影響

今回は、Fourchet Fら(2015)の論文

「To what extent does intrinsic foot muscle strengthening enhance rehabilitation outcomes for ankle sprains?」をご紹介します。

足関節捻挫のリハビリテーションの現状と課題

足関節捻挫のリハビリテーションでは、足関節の可動域と神経筋協調性を元の状態に戻すことが重要です。特に、足関節捻挫の85%は外側靱帯の損傷によるものであり、再発率は特定のスポーツ選手で最大70%に達します。

再発を繰り返すと慢性的な足関節不安定性(CAI)となり、これは機械的および機能的な要因によるものとされています。機能的不安定性には、姿勢制御、神経筋機能、固有受容感覚、および筋力の欠陥が含まれます。

内在筋と外在筋の役割

アメリカ整形外科学会が推奨するリハビリでは、外在筋(EFM)を中心にトレーニングを行い、足関節の安定性を高めることを目指しています。しかし、足関節捻挫の再発率の高さは、このアプローチだけでは不十分であることを示唆しています。

これに対し、注目されているのが内在筋(IFM)です。IFMは足の中で起点と終点を持つ筋肉で、サイズは小さいですが、足の局所的な安定化に重要な役割を果たします。IFMとEFMは「足のコアシステム」として協調して機能します。IFMは足の局所的な安定化を担い、EFMは足の大きな動きをサポートします。

Short Foot Exercise の効果

内在筋を強化するための中心的なトレーニングとして「Short foot exercise」が挙げられます。この運動は、内在筋を活性化させて内側縦アーチを持ち上げることで、足の姿勢を安定させます。

短足運動の効果は、立位でのアーチ保持能力や片足バランス能力の向上として現れ、慢性的な足関節不安定性を持つ患者の自己評価機能も向上させることが示されています。トレーニングは座位から始まり、徐々に難易度を上げて片足立ちや着地運動などの応用動作に進められます。

神経筋電気刺激(NMES)の役割

Short foot exercise を補完する方法として、神経筋電気刺激(NMES)が提案されています。この方法は、患者が内在筋の正しい動きを習得する初期段階で特に有用です。NMESは、筋肉を自発的に動かすのが難しい場合でも、電気刺激によって内在筋を活性化させることができます。この技術は、筋肉の神経活動を増加させ、筋力を強化し、足の姿勢制御を向上させる効果があります。

NMESと短足運動の組み合わせ

NMESを利用した内在筋トレーニングでは、特に内側縦アーチや母趾外転筋(AH)への刺激が効果的であることが研究で示されています。短時間のNMESセッションでも足圧分布が改善し、バランス制御能力が向上する結果が得られています。

NMESは初期段階で患者に筋肉の活性化を理解させ、その後、内在筋の自発的な活性化へ移行する論理的なリハビリプロセスが推奨されています。

内在筋の強化と神経筋電気刺激の併用は、足関節捻挫の再発予防と慢性足関節不安定性の改善に寄与します。

局所安定性や動的バランス能力を向上させ、特に従来の外在筋トレーニングだけでは補えない領域を強化します。さらに、NMESは筋肉活性化の学習を補助し、リハビリの効率化を実現します。

このアプローチは、スポーツ選手から一般患者まで広く適用可能で、長期的な機能改善と予防効果を期待できる重要な治療手法です。

参考文献

Fourchet F. et al 「To what extent does intrinsic foot muscle strengthening enhance rehabilitation outcomes for ankle sprains?」(2015)

NEUROスタジオ東京 山岸