今回ご紹介するのは、C. M. Bütefischら(2005)の研究です。
それまでにも脳卒中患者の神経イメージング研究において、麻痺手の運動時に両側の運動野の活性化が見られることが報告されていました。
しかし鏡像運動の存在やEMG記録(筋活動)の欠如の問題点がみられ、非損傷側の筋活動がない状態でも運動野の活性化がみられるかは明確ではありませんでした。
目的:
脳卒中患者の運動機能回復時における、両側の運動野の活性化メカニズムを調査すること。(特に麻痺手の動作時における非損傷側の運動野の関与)
方法:
・8人の脳卒中患者と9人の健常対照者
・fMRIとEMGを同時記録して手指運動課題を実施(1Hz頻度で親指vs第2・3・4・5指の対立運動)
結果:
8人中5人の脳卒中患者で、麻痺手の運動時に両側の運動野(一次運動野と運動前野)の活性化を確認(下図:右側が病変側・左側が非損傷側)
この5名に非損傷側の筋活動は見られなかった
対照群では同じ課題で厳密に対側の運動野のみが活性化(下図)
考察の中で、筆者らは非損傷側運動野の活性化は、運動系の損傷後の適応的可塑性の一つの基盤である可能性を示唆しています。
臨床的意義
脳卒中後の回復メカニズムの理解として、運動機能の良好な回復を示した患者では、非損傷側の運動野が代償的に活性化すること
リハビリの中でも非損傷側の運動野が運動機能回復に重要な役割を果たす可能性を考慮し両半球の機能を考える必要性がある
Recruitment of contralesional motor cortex in stroke patients with recovery of hand function. (DOI: 10.1212/01.WNL.0000154603.48446.36)
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