研究の背景と目的
肩関節は骨の形状による制約が少ないため、安定性は主に以下によって保たれています
靭帯・関節包構造(極端な位置でのみ機能)
回旋腱板と上腕二頭筋(中間位での動的安定化)
研究者らは、固有受容覚が筋肉の反射的収縮を引き起こし、肩関節の過度な動きを防ぐ重要な役割を果たすという仮説を立てました
研究方法
対象者:90名
正常な肩:40名
不安定な肩:30名
手術後:20名
測定項目
・TTDPM(受動運動感知閾値):どれくらい小さな動きまで感じられるか
・RPP(受動的位置再現能力):元の位置をどれくらい正確に再現できるか

主な結果
正常な肩
TTDPMは平均1.5~2.2度
利き手と非利き手で差はなし
不安定な肩
TTDPMが約2.8度と**有意に悪化**(p < 0.005)
RPPも約1度**有意に不正確**(p < 0.01)
手術後の肩
TTDPMとRPPが正常レベルまで回復

結論
・肩関節不安定性と固有受容覚低下には明確な関連がある
・手術により固有受容覚は正常化する
・靭帯損傷により固有受容覚フィードバックが失われ、筋肉による反射的保護機能が低下することが、肩関節不安定性の発症メカニズムの一つと考えられる
臨床的意義
従来:肩関節不安定性=靭帯の機械的破綻
新しい理解:肩関節不安定性=感覚―運動統合システムの機能不全
肩関節不安定性は単なる「支持組織の問題」ではなく、神経感覚系を含む複合的な病態であることが科学的に証明されました
参考文献:Warner et al. Role of Proprioception in Pathoetiology of Shoulder Instability. 1996
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